開運の母?
私が「開運の母」のことを知ったのは、転職先で先輩から聞いたある話がきっかけでした。
なんでも、その先輩の地元であるT駅界隈には、「開運の母」と呼ばれる有名な人がいて、「アドバイスがとにかく当たる」「運勢が急に上がったみたいに仕事やプライベートがうまくいくようになる」と大変に有名らしいのです。
「開運の母」というネーミングから、てっきり占い師だと思ったんですが、先輩曰く占い師ではないとのこと。スナックのママさんみたいな感じで、きさくに相談にのってくれる人の良いおばちゃんなのだそうです。
話を聞くうちに気になってきて、今度の週末は予定もないし、T駅は家から電車一本で行ける距離なので、せっかくだから「開運の母」に会ってみようと思い立ちました。
おばさんを捜せ!
最寄駅から電車に揺られること40分、辿り着いたT駅は急行も停まる比較的大きい駅です。駅前もけっこう賑やかで、コンビニや銀行、ファストフード店に大型スーパーもあります。
時刻は16時。「開運の母」は夕方の遭遇率が高いという先輩の話を聞いてこの時間帯にしたのですが、人通りが思った以上に多くて、こりゃあ特定の1人を見つけるのは難しそうだな…と早くも難儀ムード。
他に先輩から聞いた「開運の母」の情報としては、
・50〜60代くらいのおばさん
・「開運の母ですか?」と聞くと「占いはしないけど」と答える
・会えるのは夕方〜0時頃まで(0時以降に会えた人がいないらしい)
こんな感じでした。てことは、今が16時だから、タイムリミットまではあと8時間です。
ところが、先述のとおり人通りが多く、さらに時刻が夕方という事で、スーパーに買い物に来ているおばさんたちがかなり多い! わあ、おばさんのお花畑や…なんて考えながら、これではさすがに捜しづらいので、すぐ近くのコーヒーショップに入って買い物おばさんたちのピークが過ぎるのを待つことに。
…そしてやっと、やーっとおばさんたちが少なくなってきたのが19時。この時点ですでに3時間のロス! 残り5時間、うかうかしてられないとコーヒーショップを出て「開運の母」を捜します。
歩き回りながら、そういえば「開運の母」の外見的な特徴を聞いてなかったな…と気づく。ピークを過ぎたとはいえ、それなりの規模の駅前にいる「50〜60代くらいのおばさん」なんてそう珍しいものじゃありません。なのにこちらには、匿名アンケートの回答者レベルの手がかりしかないわけです。はじめに気づくべきだった…。
こうなったら、それらしきおばさんに片っ端から突撃するしかありません。「突撃!隣の晩ご飯」ならぬ「突撃!駅前のおばさん」です。
まず、近くにいたおばさんに、なるべく怪しまれないように人を捜してて困ってますオーラ全開で「すみません…」と声をかけてみます。
「すみません、開運の母ですか…?」
「…いえ、違いますけど…」
ああ、おばさんの不審者を見るような視線が突き刺さる。そりゃそうですよね…私だって駅前でいきなりそんなこと聞かれた日には「何だコイツ」ってなりますもん…。
「失礼しました」とそそくさと退散し、しばらく待ってから別の人にも声をかけてみます。ハズレ。
あれ、これもしかして、私ほんとに不審者になってる…?
しかし! 三度目の正直でした。
「すみません、開運の母ですか?」
控えめに声をかけたそのおばさんは、こともなげに答えました。
「占いはしないけどねー」
…お? おおおおお!?
開運の母、発見!
こ、この人だー!! 思わず興奮して、「えっと、あの」しか言えなくなる自分。おばさんはとっても小柄で、ニコニコしながら「誰かに聞いてきたん?」と私に聞いてきました。
「はい! あの、ここの近所に住んでる人に聞きました」
「あらそうなの〜、わざわざねえ、電車乗ってきてくれたん」
そうなんです、といおうとしてあれ? と思いました。なんでこの人、私が電車で来たって知ってるんだろう…?
T駅の駅前にはバス・タクシー乗り場があり、電車でなくても来れるんです。なのに、まるで私のことを見ていたかのように、なんのためらないもなく「電車」といった「開運の母」…。
これは本物だ、と直感して、そのあと10分くらい話をさせてもらいました。
愛想よく相槌を打ってくれた姿が印象的でしたが、不思議なことにどういう顔だったとか、どんな服を着ていたとか、そういうところがあまり印象に残ってないんですよね…先輩から聞いた話に「開運の母」の外見的特徴がなかったのはそのせいかも? と思いました。
いくつかアドバイスをもらったので、今後の運勢に期待したいところです。
それにしても不思議な人だったなあ…。